『物理学の理論的系譜』、面白いのだけれどもゲーデルの不完全性定理を自然科学全般に拡大して論じる箇所があって ちょっと待って
になっています
ゲーデルの不完全性定理そのものの説明は適切そうにみえるけれど、「科学は原理的に完全ではない。その理由は、自然科学は自己言及型の論理であるゆえに、ゲーデルの不完全性定理が自然科学にも適用されるからである。(中略)これを自然科学に当てはめると次のようになる。人間を認識するその人間もやはり自然の一部であるから、人間の記憶、思考、論理的推論といった行為も、すべて自然現象の一種であると言える。すると、自然科学とは『自然自体が人類を通して自らを解明する自己反映活動』ということができるので、自然科学は自己言及型の論理である」というのは適切な拡大解釈なのか確信が持てない。
他方で、「人間の記憶、思考、論理的推論といった行為も、すべて自然現象の一種である」という立場は、もしも私たちの宇宙があらゆるスケールで完全に決定論的である(超決定論)としたら「私たちがある理論を考案して、観測していないあらゆる点でその理論が破綻しているにも関わらず、私たちが行うすべての観測結果がその理論を支持する」ことがあらかじめ決まっている可能性を否定できない、という別の面白い観点もあると思う。